昭和24年、沖縄本島那覇市の隣にある豊見城(とみぐすく)市に、初代大城忠孝が｢豊見城酒造工場｣として創業したのが始まりです。その後、昭和55年に社名を変更し、忠孝酒造となりました。
平成元年には｢現代の良き泡盛文化をつくりたい｣と、泡盛の熟成に最適といわれた南蛮甕の研究のため、自ら陶芸に打ち込んだ大城繁前社長(現会長)の陣頭指揮のもと、泡盛メーカーとしては初めて自社に窯を有し、泡盛熟成用の容器「琉球城焼(りゅうきゅうぐすくやき)」を開発しました。
古き良き琉球王朝時代から続く沖縄文化を受け継ぎながら、泡盛文化の継承・創造を通して、現代社会においても世に誇れる価値観を創造することを目標としています。
かつて行われていた、米のとぎ汁を乳酸発酵させた液、シー汁を使用した製造法、「シー汁浸漬法」を復活させたり、通常は2日程度の製麹期間を4日に伸ばした「よっかこうじ（四日麹）」を開発したり、独自の取り組みでオリジナリティあふれる泡盛を作り続けています。

「琉球城焼」は、琉球王国が海外貿易を盛んに行っていた１５～１６世紀に東南アジアから伝来した南蛮甕が起源です。南蛮甕の特徴は、釉薬を使わずに焼き締めた焼き物で、泡盛の保管をはじめ古酒造りに欠かせない容器として使用されてきました。
平成元年に会長の大城 繁は、「酒造家として泡盛がよくなるような甕を開発したい」という古酒造りへの想いから泡盛メーカーとしては初めての泡盛を熟成させる甕の研究に着手し、平成三年に「琉球城焼」を誕生させました。

忠孝酒造では、土を沖縄県本島南部でとれる「島尻ジャーガル」と主に山原（ヤンバル）でとれる「琉球赤土」の二種類をブレンドしています。ジャーガルは非常にきめ細かく粘り気が強い土で焼いたときに固く締まります。また、ジャーガルに赤土をブレンドすることにより、甕の強度を高め、泡盛の貯蔵と熟成に適した甕ができます。
琉球城焼は、古酒を漏らす事なく、貯蔵する為に、鉄分を多く含み、密度を濃くした材質でできています。軽く叩いてみると、まるで金属製の容器を叩いたように甲高く、それでいて陶器独特の澄んだ音が響いてきます。

甕を焼く際、直接炎が当たった所にできる色変わりを『窯変』といいます。これは炎の色が焼きついた物で、炎と土が融合した、最高の景色です。焼くときの、窯・薪・甕の状態など、様々な要因が影響しますので、同じ模様の窯変は二つとありません。そのため、お届けする商品の模様は写真のものと異なります。
どんな窯変の甕が届くのか、お楽しみに！

泡盛には、古酒の風味を保ちつつ、熟成をはかることができる「仕次ぎ」という熟成方法があります。甕で熟成させていると、壁面からの蒸散で酒が減ることがあります。また、当然ですが、飲めば減っていきます。こうして減った分を次に古い泡盛で補充しながら長期間かけて古酒を育て上げる貯蔵方法のことを「仕次ぎ」と呼びます。
注ぎ足しながら酒質を安定させて熟成させるのは世界でも泡盛の仕次ぎとシェリー酒のソレーラ法ぐらいだと言われています。
仕次ぎの仕方ですが、まず本セットの「琉球城焼　1升甕」を熟成させる基盤とします。これが一番甕となります。数年後、この一番甕の中身を飲んだりして減った分を本セットの瓶から補充します。これが二番甕にあたります。この時、三番甕にあたる「忠孝5年古酒720ml」をお求め頂き、二番甕にあたる瓶へ補充して頂くと、さらに数年後の仕次ぎの時に酒質を維持することができます。
どの程度の量を仕次ぎしていくのかは人によって意見が分かれるところです。3～5％程度が限度という人もいますが、私は3～5年に1回、10％を仕次ぎしています。
こうして仕次ぎしながら古酒を育てていけば、数百年にわたって熟成させ続けることができるとも言われています。実際、戦前には百年を超えて仕次ぎされた泡盛をもっていた家庭も多くあったようですが、戦争によってそのほとんど全てが割れてしまいました。
平和の象徴とも言える百年古酒の育成に挑戦してみませんか？

初めに感じられるのは中華のおこげのような香ばしい米の香り。口に含むとバニラの甘さがパッと広がります。フーチバー(よもぎ)のような青さを思わせる苦みをほのかに感じますが、この苦みとナッツような風味が合わさってピスタチオのように感じます。
鼻からはバニラの香りが抜けていきますが、その奥にふと、白木蓮のような白く厚みのある花の香りを感じます。
キノコのような厚みのある旨味と香りにバニラの甘味が混ざり合って、メープルシロップような後味を長い余韻として感じられます。

【ストレート】
仕次ぎの際に汲み出した泡盛は、ぜひストレートで味わってみて下さい。カラカラとちぶぐゎーを使うと、ゆっくりと雰囲気を楽しみながら味わうことができます。
カラカラは泡盛古酒を楽しむ時に使われる沖縄伝統の酒器です。中には陶器の玉が入っているものもあり、振ると「カラカラ」音がするからとか、みんなでお酒を楽しんでいる時におかわりが欲しくて言う「かして、かして」のうちなーぐち(沖縄方言)「から、から」から来ているとか、名前の由来には諸説あります。
ちぶぐゎーは小ぶりの盃のことです。江戸時代末期、浦賀を訪れたペリーは、実はその前に沖縄に寄港していました。その時に琉球人はもちろん泡盛で歓待したのですが、その時に使われた盃は「耳たぶのように小さかった」とペリーは書き残しています。
こうした酒器で楽しんで頂くと、美味しさもひとしおです。