1952年明治時代より続く焼酎蔵元を、初代下田伯熊氏が買い取り創業。歴史ある球磨焼酎の中で最も新しい蔵元という事もあり、常に斬新で個性的な商品を生み出すことを心掛けてきた。先代は1986年に蔵元敷地内に湧く温泉水を使用した温泉焼酎を、1999年には牛乳を使用した牛乳焼酎を開発した。そして、現代表である下田文仁氏が蔵に戻り多くの書物を読み、研究し造り上げたのが玄米焼酎「隠礼里」である。

蔵のこだわりとして、全ての商品に共通しているのが天然温泉水を仕込み水として使用している点、通常アルコールは酸性であるがこちらの温泉水は弱アルカリ性で出来上がった焼酎もアルカリ性となり非常に人の体に優しく馴染みやすいpHとなっている。また、「隠礼里」に関しては麹、掛け共に玄米で仕込む。昭和30年頃の鉄釜と錫製の冷却蛇管の蒸留機に二段蒸留器を組み合わせた蔵元オリジナル、濃厚な味わいと切れの良い酒質が生まれる。3年以上の熟成を経て瓶詰めされるこだわりが詰まった数量、流通限定商品である。

～温泉水を使用しての焼酎造り～

高度経済成長も終わりを迎えていた1976年、現会長の下田猛氏は「美味しいだけではない焼酎を造りたい」、「体に負担の少なく健康に役立つ商品を造りたい」との思い立ち、蔵のある人吉には温泉が豊富にあることに着目、温泉水で焼酎を仕込めないかと試行錯誤を始めます。

焼酎に適する泉質を探し求め研究者を訪ねては温泉の効能を問いつつ研究を続け、１０年をかけて全行程にて温泉水を使用した温泉焼酎の商品化に成功したのです。

古くから温泉が健康増進に役立つことは「湯治」などで長期間温泉施設に滞在する風習があることなども合わせ経験的に知られていますが、近年、温泉の効能を科学的に明らかにする取り組みも活発で、平成２６年には環境省が「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」というパンフレットを発行、そこには「一般社団法人日本温泉気候物理医学会の協力の下、最新の医学的知見と科学的根拠を踏まえた」などうたわれています。より科学的で合理的な研究が温泉利用の分野で進んでいるのです。

～温泉焼酎に使用されている温泉の効用～

大和一酒造元に湧く温泉水は「炭酸水素塩」と「塩化物泉」の二つの泉質が混じりあったもので、この二つの温泉の効果が期待できます。
環境省のパンフレットによるとそれぞれ以下の作用があると言われています。

炭酸水素塩泉
俗にいう「美人の湯」陰イオンの主成分が炭酸水素イオンで、皮膚の角質を軟化する作用があります。飲用としては胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、 耐糖能異常（糖尿病）、高尿酸血症 （痛風）に効果があると言われています。

塩化物泉
俗にいう“熱の湯”。 陰イオンの主成分 が塩化物イオン。 皮膚に塩分が付着するため、保温効果・ 循環効果があります。
飲用としては萎縮性胃炎、便秘に効果があると言われています。

※このような効能は、湧出したばかりの温泉水に関するものであり、温泉焼酎の効能を直接的に示すものではありません。また、温泉の飲用は1日当たり約500ﾐﾘﾘｯﾄﾙまでと言われています。

～弱アルカリ性の焼酎～

温泉焼酎は仕込みから割水まで弱アルカリ性の温泉水を使用。なので焼酎も弱アルカリ性です。
人の体は呼吸や腎臓などの働きにより体液を弱アルカリ性に保つように懸命に働いてくれています。しかし、ビールやお酒、そしておつまみなども酸性食品に偏りがち…

体もあまり頑張りすぎると、悲鳴を上げることもしばしば。食事もお酒もバランスが大切です。
弱アルカリ性の温泉焼酎を是非お役立てください。

※人吉温泉の発祥は５００年以上前の室町時代。熊本の南部一帯を治めていた相良氏の１２代領主相良為続が明応元年（1492年）に林温泉「湯楽寺」に泊まり、温泉に浸かったという記録が残っています。 以来、この地には「湯の元観音」が祭られ、湯の神神社も建てられています。
本格的な温泉開発がすすんだのは明治期から。人吉温泉には北原白秋、斎藤茂吉、若山牧水、徳富蘇峰、田山花袋も宿泊。文化人にも愛されました。

人吉温泉水と良質の米を醸し伝統の蒸留法（常圧蒸留）で仕上げた体に優しいアルカリ性焼酎。
超軟水で口当たりがまろやか、甘い香りとほっこりした印象がどこか懐かしさを誘う１本です。

2020年7月に熊本県を襲った豪雨により、大和一酒造元は蔵や家屋の一階部分が完全に浸水し焼酎を造るための設備が水没・損壊、原酒の８割が流されるなど甚大な被害を受けました。一時は蔵の再興は難しいのではないかと思われたのですが、同じ地域の蔵元仲間の助力やボランティア、激励の手紙や寄付金などの支援により、少しずつ前を向き歩み始めたのです。

現在では総ヒノキ造りの麹室が完成、そして焼酎を造る設備に関しても仮の状態とはいえ復旧することができ、2020年の11月からは仕込みを再開するところまで前進しました。

ただ、いまだに店舗、事務所や貯蔵施設、一部倉庫に関しては手を付けられていない状態が続いており、復旧までにはまだ時間がかかる状態とのことです。
今回、微力ながらも、一日も早く完全復旧するお力添えが出来ればと思い、豪雨災害で被害を免れた貴重な焼酎を分けて頂きました。

是非、斬新な商品と伝統的な商品、二つの個性を生み出す大和一酒造元の焼酎をご賞味下さいませ。